自己破産と個人再生、選び方の基準を解説します
- 「自己破産と個人再生の違いとは?」
- 「自己破産と個人再生どちらを選ぶべきか?」

債務整理とは、借金問題を法的に解決するために国が作った制度です。中でも借金を大幅に減額できる「個人再生」と、借金自体を帳消しにしてもらえる「自己破産」はたくさんの方に利用されています。
しかし、はじめて債務整理しようとする方は、個人再生と自己破産の違いについて、きちんと理解できていないケースが多いものです。
債務整理はあなたの今後の人生を左右する大切な手続きになりますので、やはりそれぞれの違いについてきちんと把握したうえで検討したいところでしょう。
そこで今回は、自己破産と個人再生の違いについて、さまざまな視点から選択する目安を紹介します。
自己破産と個人再生
まず、自己破産と個人再生がどのような手続きなのか、簡単に説明します。
自己破産とは
自己破産とは、財産を失う代わりに借金をチャラにしてもらえる手続きです。
厳密に言えば、自己破産は債務者(借金をした人)の財産を処分して債権者(お金を貸したクレジットカード会社・消費者金融・銀行など)に配当する「破産」手続きと、裁判所に借金の支払いが不能とみなされることで借金を帳消しにしてもらえる「免責」という2つの手続きを同時に行います。
ただし、99万円以上の現金や20万円以上の価値ある財産をほとんど失うといった、デメリットも多い債務整理です。
個人再生とは
個人再生とは、裁判所に申立てすることで借金を1/5~1/10程度まで減額してもらえ、残った借金を原則3年間(最大5年間)で返済できれば完済扱いにしてもらえる手続きです。
また、個人再生には借金を減額してもらいつつ、住宅ローンが残った自宅を手元に残せる「住宅ローン特則」と呼ばれる制度も利用できます。
そのため、個人再生は住宅ローンの返済に苦しむサラリーマンなどの利用者が多いのです。
自己破産と個人再生の借金減額率の違い
自己破産と個人再生ではその借金減額率に大きな違いがあります。
自己破産の借金減額率
自己破産の手続きを裁判所に申立てして、免罪が認められれば借金を帳消しにしてもらえます。
そのため、借金問題を根本的に解決することが可能なのです。
個人再生の借金減額率
個人再生では、借金額に応じて「最低弁済額」と呼ばれる借金の減額率が以下のように決められています。
借金額(住宅ローンを除く) |
最低弁済額 |
100万円~499万円 |
100万円 |
500万円~1,499万円 |
借金額の1/5 |
1,500万円~2,999万円 |
300万円 |
3,000万円~4,999万円 |
借金額の1/10 |
個人再生をするほとんどの人が行う手続きである「小規模個人再生」では、最低弁済額か「清算価値(債務者が保有する財産)」のどちらか多いほうを支払う必要があります。
いっぽう、サラリーマンや公務員などが利用できる「給与所得者等再生」においては、先程の2つの条件に加え「2年分の可処分所得額」の中でもっとも多いものを支払うことが必要です。
なお、可処分所得額とは、毎月の給料から税金や家賃、保険、光熱費などを抜いた手取り金額になります。
減額率の違いで自己破産と個人再生を選択する目安
個人再生すると借金を大幅に減額してもらえますが、手続きの後、借金の返済が残ります。
そのため、減額した借金を3年間返済し続けられる程度の安定収入がある場合は、個人再生を選択するのがおすすめです。
しかし、減額後の借金を返済できる見込みがなさそうな場合には、自己破産を検討したほうがよいでしょう。
また、個人再生で減額対象になる借金は5,000万円以下となりますので、それ以上の借金額の場合には自己破産するしかありません。
自己破産と個人再生で処分される財産の違い
自己破産と個人再生では、財産の扱いもそれぞれ異なります。
自己破産における財産の扱い
自己破産すると、99万円以上の現金と20万円以上の価値ある財産が没収対象になります。
そのため、持ち家や車、土地や株といった目ぼしい財産をほとんど失うことになるでしょう。
ただし、すべての財産を没収されるわけではなく、99万円以下の現金や生活する上で最低限必要になる家具や家電などは「自由財産」と呼ばれ、自己破産しても手元に残すことが可能です。
個人再生における財産の扱い
個人再生において、財産は没収対象にはなりません。
そのため、個人再生したからといって必ずしも財産を処分する必要はないのです。
ただし、20万円以上の価値ある財産は清算価値として扱われるため、場合によっては借金減額率が下がってしまう可能性もあります。
よって、借金返済に充てるために仕方なく財産を処分しなくてはいけない場合もあるでしょう。
また、個人再生では住宅ローン特則を利用することで、住宅ローンが残った自宅を手元に残すことができますので、絶対にマイホームを失いたくないという人にはおすすめです。
財産の扱いによる違いで自己破産と個人再生を選択する目安
自己破産すると目ぼしい財産をほとんど失うことになるため、何か手元に残したい財産がある方は個人再生を選択したほうがよいでしょう。
また、住宅ローンが残った自宅を失いたくないという方にも、個人再生がおすすめです。
ただし、住宅ローン特則を使っても住宅ローンの返済は従前通り残りますので、借金と並行して返済していく必要があることを忘れないようにしましょう。
いっぽう、目ぼしい財産がない方であれば、自己破産することで借金問題を完全解決するというのも一案といえます。
自己破産と個人再生の申立て要件の違い
自己破産と個人再生では、申立てに必要な条件がまったく異なります。
自己破産の申立て要件
自己破産は裁判所に借金の「支払いが不能」と認められることが利用条件になっています。
そのため、何とか借金を返済できるような経済状況の方の場合には、申立てが棄却される可能性が高いでしょう。
また、自己破産には「免責不許可事由」と呼ばれる、免責対象外の借金の原因が存在するため、ギャンブルや風俗で作った借金や、派手な買い物や海外旅行といった散財が原因となる借金の場合には、免責が認められない可能性もあります。
しかし、実際には初回の自己破産であれば、「裁量免責」という裁判官の裁量で免責が認められる場合がほとんどです。
個人再生の申立て要件
小規模個人再生の申立てに必要な条件は、以下となります。
・申立て人が個人であること
・借金総額が5,000万円以下であること
・継続、または反復した安定収入を得られる見込みがあること
・再生計画(個人再生後の詳細な借金返済計画)で決めた弁済額を原則3年間(最長5年間)で返済できる程度の収入があること
上記条件のうち一つでも満たせなかった場合には、申立てが裁判所に棄却されるため個人再生することは不可能です。
いっぽう、小規模個人再生の申立てをする場合には、小規模個人再生の条件に加えて以下の条件も必要になります。
・給与に相当する定期的な収入があること
・収入の変動幅が小さいこと
・前回の給与所得者等再生および、ハードシップ免責、自己破産による免責から7年以上経過していること
・計画弁済額が2年分の可処分所得額以上であること
収入の変動幅に関しては、直近2年間の年収の差が20%以内に収まっていれば、小さいとみなされることがほとんどです。
また、「ハードシップ免責」とは、個人再生の再生計画に基く返済の最中に、病気や会社の倒産といったやむを得ない事情により借金返済が困難になった場合、借金の3/4を返済済みといった厳しい条件を満たすことで、残った借金を免除してもらえる制度になります。
なお、個人再生において、借金の原因は不問とされているため、原則としてどのような借金でも減額の対象にすることが可能です。
申立て要件の違いで自己破産と個人再生を選択する目安
自己破産と個人再生における主な申立て要件の違いは、
・自己破産:借金の支払い能力がないこと
・個人再生:減額後の借金を返済する能力があること
という点と、
・自己破産:借金額に制限なし
・個人再生:5,000万円以下の借金
となっています。
したがって、減額後の借金を返済できる方であれば個人再生、借金を返済できそうにない方は自己破産を選択するべきでしょう。
いっぽう、5,000万円以下の借金であれば個人再生を利用できますが、それ以上の借金額の場合には自己破産しか方法はありません。
自己破産と個人再生の手続きに必要な期間の違い
自己破産と個人再生の手続きに必要な費用を比較してみましょう。
自己破産の手続きに必要な期間の目安
自己破産には、「管財事件」と「同時廃止」という2つの手続きがあります。
管財事件とは、33万円以上の現金や、20万円以上の価値ある財産を保有する人や免責不許可事由の対象者が行う手続きです。
管財事件は同時廃止よりも複雑な手続が必要になるため、手続が終了するまでに半年~1年程度の期間が必要です。
いっぽう、同時廃止とは、目立った財産がなく免責不許可事由の対象にならない方が行う手続きとなっています。同時廃止では債権者に財産を配当する必要がないことから、破産手続きの開始と同時に破産手続きが終了になる点が特徴です。
また、同時廃止は管財事件に比べ手続きが簡単なため、申立から3~4ヶ月程度の期間で手続きが終了します。
個人再生の手続きに必要な期間の目安
個人再生では申立てから再生計画の認可確定まで、だいたい4~6ヶ月程度の期間が必要です。
ただし、個人再生委員(個人再生の手続きを指示・監督するために裁判所が選任するスタッフ:主に裁判所が管轄する地域の弁護士が一般的)が選任された場合には、若干期間が長くなります。
手続きにかかる期間の違い
それぞれの手続きにかかる期間をまとめると以下のようになります。
・自己破産(同時廃止)の手続き期間目安:3~4ヶ月程度
・自己破産(管財事件)の手続き期間目安:半年~1年程度
・個人再生の手続き期間目安:4~6ヶ月程度
自己破産も個人再生も裁判所を介する手続きであるため、どちらも期間は長めです。
全般的には自己破産のほうが期間は長くなる傾向にありますが、同時廃止であれば比較的スムーズに手続きが進みますので、目ぼしい財産を持たない人であれば自己破産するのもよいかもしれません。
自己破産と個人再生にかかる費用の違い
最後に、自己破産と個人再生それぞれの手続きにかかる費用を比較します。
自己破産にかかる費用
自己破産にかかる弁護士・司法書士への費用相場は以下の通りです。弁護士と司法書士のどちらに依頼するかによって費用の相場が若干異なります。
手続の種類 |
弁護士 |
司法書士 |
同時廃止 |
30~50万円 |
15~30万円 |
管財事件 |
50~70万円 |
× |
なお、司法書士が対応できる案件は、債権者一人あたりの借金額が140万円以下の案件に限られます。(この点については、個人再生の場合も同様)
また、管財事件の場合、司法書士では対応できませんので、弁護士への依頼が必要です。
次に、自己破産する際、裁判所に支払う費用は以下が相場となります。
手続の種類 |
費用 |
同時廃止 |
1万5千円~5万円程度 |
管財事件 |
50万円~ |
少額管財 |
20万円程度 |
「少額管財」とは自己破産申立て人の弁護士が破産管財人をサポートすることによって、手続きを簡略化できる制度です。
手続き期間が短くなるため、その分費用も安くなっています。
ただし、裁判所によっては少額管財を採用していないところもありますので注意しましょう。
個人再生にかかる費用
個人再生の手続きにかかる費用は、弁護士か司法書士に頼む場合と、個人再生委員の選任有無によって異なり、以下のような相場となっています。
手続を依頼する相手 |
個人再生委員なし |
個人再生委員あり |
弁護士 |
30~60万円程度 |
0~20万円 |
司法書士 |
20~30万円程度 |
20~25万円 |
上記に加え、裁判所に支払う切手代や収入印紙代といった実費が、2~3万円程度発生します。
なお、個人再生委員に関しては、弁護士に手続きを依頼した場合、選任されないケースがあるなど、裁判所ごとにルールが異なるため注意が必要です。
費用の違いで自己破産と個人再生を選択する目安
自己破産と個人再生の手続きにかかる費用は、どちらも30~50万円程度と高額になっていますので、「借金もあるのに本当に払えるのか……」と心配される方も多いと思います。
しかし、多くの弁護士・司法書士事務所では、費用の支払いタイミングを無理のないよう調整してくれますので、ぜひ相談してみてください。
まとめ
|
自己破産 |
個人再生 |
減額率 |
・借金全額帳消し |
・1/5~1/10まで減額 |
財産の扱い |
・99万円以上の現金と20万円以上の価値ある財産が没収対象 |
・財産は没収されない
・住宅ローン特則で住宅ローンの残った自宅を手元に残せる |
申立て要件 |
・借金の支払いが不能である |
・借金総額が5,000万円以下
・継続、または反復した安定収入を得られる見込みがある |
手続期間 |
・同時廃止:3~4ヶ月程度
・管財事件:半年~1年程度
|
・4~6ヶ月程度 |
弁護士・司法書士費用 |
【弁護士】
・同時廃止:30~50万円
・管財事件:50~70万円
【司法書士】
・同時廃止:15~30万円
・管財事件:対応できない |
【弁護士】
・30~60万円
【司法書士】
・20~30万円 |
裁判所への費用 |
・同時廃止:1万5千~5万円
・管財事件:50万円~
・少額管財:20万円程度 |
【個人再生委員あり】
・2~23万円程度
【個人再生委員なし】
・22~28万円程度 |
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