強制執行で差し押さえられる条件とは?任意整理で停止できる?
- 「返済が厳しい・・強制執行で差押えなんてことにならないだろうか?」
- 「強制執行で差押えられてしまった・・任意整理で差押えを停止できないだろうか?」
借金をしばらく滞納していると、そのうちカード会社(クレジットカード会社・消費者金融・銀行)から強制執行で差押えられてしまいます。
また、差押えは基本的にあなたの給料がターゲットになるので、生活に支障をきたしてしまうでしょう。
そこで今回は、強制執行による差押えはとはどういうもので、どのように対処すればよいか?任意整理で解決できるか?について解説していきます。
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返済が滞るとカード会社から勤務先に電話がくるか?

カード会社への返済が滞ると、勤務先に電話がいくのではないかと心配になりますよね。
これについては、滞納が長引けば、実際にカード会社からあなたの勤務先に電話をすることはあるので注意が必要です。
とは言うものの、少しの滞納でいきなり勤務先に電話するカード会社はほとんどいないのが実情です。
滞納した場合は、まずは自宅や携帯電話に電話をし、何度か電話をしてもつながらない場合に郵便や訪問で取り立てるという形が一般的でしょう。
もし、カード会社が上記の手順を踏んでいるにも関わらず、ひたすらあなたがカード会社からの督促を無視したり、着信拒否したりしていると、次の手段として勤務先への連絡は行われるでしょう。
もちろん、カード会社によっては、先に自宅や勤務先に電話をして、それでも連絡が取れない場合に自宅に訪問、というように取り立ての順番が前後することもありますが、いずれにしても、最初から勤務先に電話してくることは基本的にはありません。
ここまでくると完全に勤務先にバレてしまうと心配になるでしょうが、ご安心ください。
最初は、カード会社もあなたのプライバシーを尊重して、個人名を名乗って電話してくるケースがほとんどです。
とは言うものの、何度もこのような電話がかかってくれば、勤務先の人が状況を察してしまうかもしれません。
このような事態を避けるためにも、とにかくカード会社から連絡がきたら、無視せずに応じることが重要です。
返済が厳しい状態だとできるだけカード会社を避けたいという気持ちになるでしょうが、無視するほうが後になって悪影響を及ぼします。
素直に現状を話して今後について相談してみることがベストでしょう。
給料は強制執行で差押えられてしまうのか?
カード会社から連絡がきたら無視してはいけません。
無視してもどんどん悪い方向にいくだけなので、応じるようにしましょう。
とは言うものの、取立てに応じたからと言って、それで解決というわけではありません。
もちろん返済してかねばなりませんね。
もし、借金が返済できないとなると、カード会社は次の手段としてあなたの給料を強制執行で差押える方向で動き出すでしょう。
ちなみに、強制執行による給料の差押えとは、あなたの給料の一部をカード会社が合法的に差押えることであり、強制力があるので逃れることはできません。
強制執行による給料の差押えは、毎月の給料のみではなく、退職金やボーナスも差押えの対象になりますので頭に入れておきましょう。
その他、カード会社に借金を滞納した場合に限らず、税金を滞納した場合にも、強制執行により給料が差押えられる場合があるので注意が必要です。
強制執行による給料の差押えが行われると、間違いなく勤務先に連絡が行くことになるので、勤務先にあなたが借金をしている事実がバレることになります。
この事態を免れるためには、事前に任意整理をしてカード会社への返済を先延ばしにするか、自己破産や個人再生をするしか方法がありません。
強制執行による差押えの流れ
このように、借金を滞納していると強制執行によりあなたの給料などが差押えられてしまいます。
実際どのような流れで差押えられるのかご説明していきましょう。
滞納後、取立ての連絡が来る
まず、あなたが借金の返済が滞ったら、1~2ヶ月経過した時点でカード会社から取り立ての連絡が入ります。
連絡方法は主に、電話や郵便です。
内容証明郵便が届く
カード会社から電話や郵便で取り立てが来ているにも関わらず、ひたすら無視し続けていると、次にカード会社から内容証明郵便が届きます。
内容証明郵便が来たから強制執行による差押え、とうわけではありませんが、カード会社が「差押えの準備に入った」とお考えください。
仮執行宣言付き支払督促が送られてくる
カード会社が内容証明郵便を送っているにも関わらず、それでもあなたがカード会社を無視し続けた場合、次に仮執行付き支払い督促が送られてきます。
仮執行付き支払い督促とは、裁判所がカード会社からの申立てを受けて郵送する通知なので、この通知が送られてきたら、いよいよ本格的に法的措置を講じてきたとお考えください。
なお、仮執行付き支払い督促は、裁判所が特別送達という方法で郵送します。
特別送達とは、郵便局員が手渡しであなたに書類を渡し、必ず署名を書いて受け取るというものです。
郵便ポストに投函するわではないので、受け取れなかったという言い訳はできません。
借金を回収するための法的な手段には、支払督促以外にも、小額訴訟や、通常訴訟がありますが、ほとんどのケースで支払督促が選ばれます。
理由は、早くて簡単なため、カード会社にとって都合がいいからです。
訴訟の場合は、あなたとカード会社双方の意見を裁判所が聴取してから支払い命令を出しますが、支払督促はカード会社への確認のみで督促ができるのでカード会社にとって使い勝手がいいのです。
また、小額訴訟の場合は60万円を超える金額は請求できないなどの条件がありますが(60万円を超える場合は通常訴訟)、支払督促の場合はそのような条件がないのも好まれる理由でしょう。
ちなみに、この仮執行付き支払い督促には、督促異議申立書が同封されています。
もし、借金に覚えが無い、金額が納得できないといった場合には、2週間以内であればこの申立書による異議申立てが可能です。
異議がどのようなものであろうと、一度異議申し立てがされれば、ひとまずカード会社からの督促の効力は喪失し、そのまま通常訴訟に移行していきます。
しかし、2週間を過ぎても異議申し立てをしなかった場合、カード会社から仮執行宣言の申立てをされてしまうのでご注意ください。
カード会社によっては、この経過で「貸金返還訴訟」の手続きに入り、「債務名義」を獲得している場合があります。債務名義とは、カード会社があなたの給料を強制執行で差押えるための公的な文書のことです。
なお、もしあなたがカード会社と公正証書で事前に契約していて、抵当権がある場合、カード会社は訴訟をスルーして、いきなり強制執行による差押えや、競売に出したりすることもできるので頭に入れておきましょう。
仮執行宣言が発付されたらすぐ強制執行できる
仮執行宣言が付されると、カード会社は直ちにあなたの給料の差押えを申立てることが可能です。
具体的には、仮執行宣言付き支払督促正本があなたに送付された後であれば、送達証明書さえあれば、いつでも強制執行による差押えができるようになります。
カード会社があなたの勤務先を把握していれば、かなりスピーディーに強制執行による差押えの手続きが進んでいきます。
流れとして、カード会社が差押え命令申立書を提出し、最短で1~2日で裁判所から強制執行による差押え命令が発令され、それから1~2日であなたの勤務先に強制執行による差押え命令が届くことになります。
また、仮執行宣言付きの支払い督促が届いてから、2週間以内であれば異議申し立てをすることはできますが、その前にカード会社が強制執行による差押え手続きを進めていたら、異議申立てだけでは差押えを免れることはできません。
この場合、強制執行の差押えを阻止するには、「強制執行停止の申立て」を併せて提出する必要があるので頭に入れておきましょう。
なお、1回目の支払督促が来た時点で、2週間以内に異議申立て(または強制執行停止の申立て)をしていれば、異議が正しいかどうかに関わらずカード会社による督促を無効にできますが、2回目の仮執行宣言付き支払い督促が届いた場合は、異議に正当な理由が無い場合は強制執行による差押えを免れることはできません。
もちろん、2週間経過すれば自動的に強制執行による差押えが執行されることになります。
差押命令正本が手元に届く
カード会社が強制執行による差押えを裁判所に申立て、受理されたらいよいよ差押えが実行されます。
具体的には、裁判所からあなたと勤務先宛に「差押え命令正本」というものが送られ、送った日から1週間以上が経過したら、カード会社からあなたの勤務先へ直接取り立てることが可能になるのです。
また、差押え命令書が届いた時点で、勤務先はあなたに対して、差押えられた金額分に関しては給料として支払うことができなくなります。
勤務先はあなたの給料をカード会社に直接支払うか、法務局に供託するかのどちらかを選ぶことになります。
勤務先が直接カード会社に支払うケース
差押えた給料について、勤務先とカード会社が直接やりとりし、カード会社指定の振込先口座に振り込みます。
カード会社は勤務先からの入金を確認したら、裁判所に「取立届」というものを提出します。
勤務先が法務局に預けるケース
勤務先が差押えられた給料を法務局に供託し、その旨を裁判所からカード会社に連絡し、カード会社に対して配当、または弁済交付手続きをします。
カード会社は裁判所から明細を受け取り、その後、差押えた給料を受け取ります。
なお、勤務先が任意で法務局に供託することを「債権供託」といいます。
一方、あなたが複数のカード会社から借りている場合は、勤務先は強制的に法務局に供託する義務を負い、これを「義務供託」と言います。
また、勤務先があなたの給料を供託する際、あなたの給料の手取額の全額を供託するか、強制執行で差押えられた額だけを供託するかを選ぶことができます。
勤務先は、カード会社へあなたの給料を供託する義務を負っており、もし支払いを怠るとカード会社から「取立訴訟」を起こされる恐れもあることから、できるだけミスのないよう給料全額の供託を選ぶ傾向にあります。
強制執行による差押えは給料が狙われやすい
給料は、カード会社にとって差押えしやすく、確実性があるため、最も狙われやすい債権です。
そのため、ほとんどのカード会社は金銭諸費貸借契約を締結する際に、あなたの勤務先の情報を記載させます。
なお、カード会社による強制執行は主に以下のようなものがあります。
動産執行や不動産執行が行われることは多くありません。
理由は、強制執行で差押えをされる人は、そもそも動産を持っているケースが少ないため、あまり意味がないからです。
不動産執行に関しては、換価(お金に換える)手続きに時間がかかり面倒なため、あまり好まれません。
一方、債権執行による給料の差押えは、手堅く取立てられるため、カード会社にとっては非常に都合の良い方法というわけですね。
強制執行に差押えは任意整理で停止させられる?
このように、カード会社に狙われやすい給料ですが、多くの人にとって給料が減ると生活が苦しくなったり、人によっては生活できなくなってしまでしょう。
そのため、何とかして強制執行による差押えを食い止めたいと考える人は多いのです。
そこで、任意整理を検討する人がいますが、実は任意整理では強制執行による差押えを食い止めることができないのです。
強制執行による差押えが行われる前に、任意整理で事前に対処しておくことは有効ですが、強制執行による差押えがされてしまった後では任意整理は意味をなさないのです。
任意整理は、カード会社とあなたの和解によって進める手続きであり、裁判所を通す自己破産や個人再生のような強制力がありません。
つまり、カード会社としては、あなたが任意整理をしたからといって、強制執行による差押えを止める必要は無いわけです。
もちろん、任意整理をキッカケにして強制執行による差押えを止めてくれるカード会社もいますが、いずれにしてもそこはカード会社の判断次第というわけです。
このことから、どうしても強制執行による差押えを止めたいのであれば、任意整理以外の自己破産や個人再生、特定調停を検討してみましょう。
自己破産、個人再生、特定調停は、裁判所を通す手続きであるため、裁判所が必要と認めれば、強制執行による差押えを止めることも可能です。
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