慰謝料や養育費を債務整理で減額できることは殆ど期待できない
- 「債務整理すると離婚の慰謝料や子供の養育費はどうなる?」
離婚すると、慰謝料や子供の養育費の問題が出てきます。
離婚の話し合いをした当初の取り決め通りに、支払いを行っていける分には、問題はありませんが、時間が経って状況が変わり、どうしても支払いが難しくなるケースも少なくありません。
このような場合、滞納した慰謝料や養育費を、債務整理することにより、減額できないものか?と考える人もいるでしょう。
今回は、「慰謝料も債務整理で減額できるのか?」という疑問について、詳しく解説してまいります。
慰謝料と養育費とは?

離婚すると、慰謝料の問題が出てきます。慰謝料には大きく分けて、
① 離婚による慰謝料
② 子供の養育費
...があります。
慰謝料については、離婚の原因やさまざなケースにより、金額が変動します。子供の養育費については、双方の経済的な事情を鑑みつつ、金額が決定されます。
離婚時の経済的状況だけを考慮して、慰謝料が決められてしまった場合は、後に何らかの事情で支払いが困難になるというケースもあります。
仕事をリストラされた、病気になって働けなくなった、事業が不調に陥った...など、考えられる理由は様々です。
以上のような理由で、慰謝料や養育費の支払いが難しくなり、滞納しているという場合は、債務整理により減額できないものか?と考える人も少なくないでしょう。
離婚による慰謝料とは?
離婚をする場合、慰謝料が発生することがあります。慰謝料とは、相手から受けた肉体的、精神的な苦痛を受けたことに対する補償です。離婚の原因には様々なケースがあります。
①性格の不一致
②一方の配偶者によるドメスティックバイオレンス
③人格を貶めるようなハラスメント
④生活費を渡さない
⑤不倫や浮気
...などです。
このような理由で、相手に非がある場合には慰謝料が発生します。
子供の養育費とは?
離婚について夫婦間での話し合いが行われる際、子供がいる場合は、「親権はどちらが持つのか?」という話になります。親権は、子供を養育する義務を持つことであり、子供は親権を持った親と暮らしていくことになります。
そして親権を持たなかった、もう一方の親には、子供の養育費の支払いを求められる場合があります。これが俗に言う「養育費」です。養育費の費用は、夫婦のそれぞれの収入や職業などを鑑みて、算定されます。
たとえば、妻に親権があると、元夫の方は元妻に養育費を支払う必要があります。これは子供が学校を卒業するまで、続いていくことになります。
養育費を債務整理できるのか?
いったん養育費の額が決定すると、以降は(子供が学校を出るまで)支払いをやめることはできません。また社会通念上、その責任は全うすべきでしょう。もっとも、実際は離婚当初は支払われていたとしても、数年後には支払いを滞るケースが後を絶ちません。
理由は、転職して収入が変わったり、病気などで働けなくなるなど、様々ですが、このような場合は、養育費を債務整理することは可能なのでしょうか?
結論を先に述べると、できません。
もし養育費を滞納し続けてたら、未払い分の全額完済を求められますし、最悪、財産の没収などの強制執行がとられる事態となります。
養育費が債務整理できない理由
民事再生や自己破産・個人再生の手続きにおいては、子供の養育費は「非減免債権」「非免責債権」という扱いになります。
「非減免債権」「非免責債権」とは、裁判所での免責の減額や許可がおりても、支払わないといけない債権、ということです。
養育費は、「社会通念上、その債権者が保護されるべき債権」という位置づけで、子供が健全に養育されるために、法律的に保護されている債権なのです。
以上のことから、自己破産など債務整理をした場合でも、養育費は整理の対象から外されて、これまで通り支払いを続けなければならず、未納分があれば完済しなければなりません。
民事再生での養育費の支払い
民事再生手続きを行う場合、滞納している養育費については、以下のような支払い方法の定めがあります。
まずは滞納していた未納分の元本と利息を含む総額の20%を、再生計画の履行期間3年間で支払うことが求められます。
それに並行して、当月分の養育費も支払わねばなりません。そして、再生計画の履行期間3年間が終了したら、未払い分の80%を一括で支払う...ということになっています。
すなわち、再生計画の3年間の間に、未払い分80%分の積み立てをおこなう必要があります。かなり厳しい条件ですよね。
個人再生の詳細はこちら
自己破産での養育費の支払い
自己破産においても、支払い義務は発生しますが、現実的に、本当に支払っていけるものなのか?という問題があります。
また、これは支払いを受ける側、支払う側双方にとって、深刻な問題でもあります。
たとえば、未納が続いて、差し押さえなどの強制執行をしたとしても、本当に相手の財産がなく、何の効果も期待できない、という事態が想定されるからです。
自己破産の詳細はこちら
養育費の任意整理
養育費を任意整理する場合は、どうでしょうか?
任意整理は、あくまも相手(親権を持つ元配偶者)との交渉により、手続きが行われます。
この場合は、相手側と交渉して、スムーズに合意が取れればよいのですが、「養育費を減額してほしい」という要求が通るもなのか?は、ケースバイケースとなります。
現実的には、交渉は難航することが殆どであり、かなり厳しいようです。
養育費を減額させる方法
上記でご説明してきた通り、一度確定している養育費を減額や免除させることは、かなりハードルが高いのです。ただし、養育費の金額を再設定することは、法的には可能です。
事情により、どうしても養育費を減額させて欲しい場合は、任意整理とは別に、話し合いをするより他ありません。もし話がまとまらないのならば、家庭裁判所にて「養育費減額調停」を申し立てる、という手段があります。
現実的に支払うことが可能な養育費の額へ、見直すように家庭裁判所に訴える訳ですね。
養育費は滞納し続けると、遅延損害金が発生しますし、最悪相手側に裁判を起こされ、財産を没収されるような、大変なリスクがあります。
もし問題があるようなら、早急に専門家へ相談して、事前に対策を打つべきです。
離婚の慰謝料は減額できるのか?
離婚の慰謝料についても、ポイントとなるのは、「非減免債権」「非免責債権」に該当するか否か?です。
もし「非減免債権」「非免責債権」に該当すると判断された場合は、減額、免除の対象にはなりません。
たとえば、離婚の原因について、完全に自分に非があるようなケースでは、該当しません。(暴力による離婚など)
ただし、この「非減免債権」「非免責債権」に該当するか否か?の判断は、専門家でないと難しいです。また、「非減免債権」「非免責債権」か否か、について相手と争うことになる場合は、民事再生や債務整理とは別に、訴訟を起こして確定させる必要が出てきます。
このように、いずれにせよ、弁護士や司法書士などの専門家に相談する必要があるでしょう。
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まとめ
慰謝料や養育費の支払いの減額は、相手側との話し合いでしか、解決できません。
といっても、すでに離婚から年月が経っている場合などは、人間関係が破綻しているケースも少なくなく、交渉は一筋縄ではいかないのが実情です。
交渉を成立させる為にも、素人が一人で行うのではなく、専門家の介入が必要です。弁護士や司法書士は交渉のプロなので、減額が成功する確率も高まります。
必要とあれば訴訟に踏み切ることも考慮すべきでしょう。まずは、弁護士や司法書士の無料相談を利用するのも便利です。
- 子供の養育費を債務整理により減額させたり免除することはできない。
- 民事再生の場合、再生計画履行の後、未払い分80%の一括支払いを求められるので、注意しなければならない
- 養育費の減額の方法として「養育費減額調停」がある
- 離婚の慰謝料については、場合によっては債務整理が可能だが、ドメスティックバイオレンスなど完全にこちらに非のある場合の離婚では難しく、専門家の判断を仰ぐ必要がある