代位弁済されることが決まっても債務整理で回避できるのか?
ローンの返済が滞納した場合、「期限の利益」の喪失予告通知というものが通達され、そのままにしておくと「代位弁済」通知というものが通達されます。
いったん、代位弁済となると、さまざまなリスクがあるので、事前に対処する必要があります。
今回は、この代位弁済とは何か?ということに重点を置いて解説しながら、「代位弁済されたら、債務整理することはできるのか?」等といった、よくある疑問についても、お答えしてまいります。
代位弁済とは?

一般的に、カード会社から住宅ローンを組むと、保証会社を利用することになります。その他、カードローンの利用でも保証会社を利用するケースがあります。
計画通りにローンを返済しているのであれば、何も問題はありませんが、不測の事態により、返済が難しくなるような状況(長期の入院による失業など)に陥ってしまった場合は、利用している保証会社により、あなたのもとに「代位弁済通知」が通達されます。
代位弁済とは?
代位弁済とは、あなたの借金を、あなたとは違う人(や会社)が、代わりにカード会社に弁済することです。
たとえば、カード会社からの借金がある場合、期限通りに返済をしなかったら、保証会社がカード会社に対して、滞納している残債額の全額を、代位弁済することになります。
もし代位弁済がされたならば、借金がカード会社から保証会社に移ります。それ以降は、あなたは保証会社に対して、借金の返済をすることになります。
保証会社から一括支払いを請求される
代位弁済により、カード会社からの借金が保証会社に移ると、どうなるのでしょうか?
結論から述べると、求償権に基づき、保証会社はあなたに対し、借金の一括支払いを請求してきます。
求償権とは、「肩代わりした借金を支払え」と請求できる権利です。つまり代位弁済とは、保証会社があなたに代わって借金を返済して、求償権を持つことと、言い換えることができます。
代位弁済の注意点
代位弁済となると、どのような影響があるのでしょうか?注意すべき点を、下記にて整理いたします。
期限の利益
通常、カード会社から借金をする場合、契約した期間までは、借金を分割払いすることができます。これを「期限の利益」と呼びます。
「期限の利益」を、平たくいうと、契約により支払日を定めていれば、その支払日までは返済する必要はなく、支払日までは、カード会社もあなたに請求することはできない、という権利です。
この「期限の利益」がないと、カード会社はいつでもあなたに、借金の残額を一括で支払うように請求することができるのです。つまり、「期限の利益」により、あなたは守られているからこそ、支払期限にまで支払いを猶予されている、といえる訳です。
期限の利益を喪失すると?
ローンの支払いを滞納すると、この期限の利益が喪失してしまいます。
その後、カード会社に対し、保証会社が残債全額と遅延損害金を一括返済します。そして借金を肩代わりした保証会社は、あなたに対し、支払った全額を一括返済するよう、請求してくることになります。
財産の差し押さえ
もしあなたが、一括で返済できない場合、保証会社は債権回収の為、あなたの財産の差し押さえをおこないます。
現金、預金、自動車、不動産、保険金の解約返戻金、給料の一部などの、さまざまな財産が没収されて、換価処分されます。
なお、差し押さえは裁判所に申し立てられて行われます。もし給料を差し押さえされたら、会社に借金の事実がバレてしまう可能性があります。
自己破産で失うものと失わないもの
ブラックリストに載る
代位弁済になった時点で、個人信用情報機関は、事故情報として登録します。
これにより、「新たに借り入れができない」状態になります。したがって、新たにクレジットカードを作ったり、キャッシングやローンを組むことができなくなります。なので、自動車やマイホームを購入することもできなくなります。
このような制限は一定期間を過ぎると解消されます。ケースにもよりますが、だいたい5~7年程といわれています。
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代位弁済による借金の時効
代位弁済になった場合の借金の時効はどれくらいなのでしょうか?
保証会社が代位弁済を行った日から起算して、事業目的の借金は5年、そして個人的な借金ならば、保証会社が商法上の商人なら5年、保証会社が商人でないなら10年となります。
借金の目的 |
消滅時効の期間 |
事業目的 |
5年 |
個人的な目的 |
保証会社が商法上商人なら5年(商事債権) |
たとえば、信用保証協会は、信用金庫などと共に、商法上の商人ではありません。なので、保証会社が信用保証協会の場合、個人的な目的での借金なら10年、事業目的の借金なら5年となるわけです。
住宅ローンの代位弁済について
代位弁済でもとりわけ注意したいのが、住宅ローンの代位弁済です。ここで問題となるのは、債務整理の個人再生を選択しようとしているケースです。
個人再生とは、裁判に申し立てをして、借金の総額を約5分の1程度にまで減額してもらった上で、残りの借金を原則3年(場合によっては5年に延期可能)かけて、カード会社に分割で支払っていくことで、借金を整理する、というものです。
個人再生がかなり大変になる
もし、住宅ローンの代位弁済がおこなわれると、個人再生の申し立てを行うのが困難になります。詳しく述べると、住宅ローンの代位弁済がなされた後、代位弁済の日から6か月以内に、個人再生の申し立てを行わないといけなくなります。(その他の債務整理はメリットが少ない)
実際のところ、6ヶ月で、個人再生のために、弁護士に依頼したり、費用を支払ったり、必要書類を作成したり...するのは、かなり大変なことなのです。住宅ローンの代位弁済がなされてしまったら、個人再生は断念して、自己破産を検討しなければならなくなることが多いのが、実情です。
個人再生の詳細はこちら
連帯保証人に迷惑をかける
自己破産の場合は、保証人へ迷惑が及ぶので注意が必要です。なお、連帯保証人の場合は、自己破産の有無に限らず、返済義務が発生します。
あなたが自己破産をしたら、カード会社はあなたの連帯保証人に請求を行います。カード会社は保証人に対して、一括返済を求められます(分割払いが認定されるケースもあります)
また、保証人に返済能力がない場合は、連帯保証人が債務整理するしかないこともあります。
自宅が競売にかけられる
住宅ローンの代位弁済がなされると、抵当権が実行されるため、自宅は差し押さえられて、競売にかけられることになります。保証会社は競売により換価した住宅を、借金の返済として充てることができます。それでも残債が残ってしまった場合は、保証会社に対して、残額を返済していくことになります。
このように、個人再生を検討しているのであれば、いかに住宅ローンの代位弁済を未然に防ぐのか?が重要なポイントとなっていきます。
代位弁済までの流れ
上記でご説明してきた通り、代位弁済をされると悪影響があるのですが、一般的に、代位弁済される前には、いくつもの段階があります。
代位弁済までの流れる下記に整理すると、
①催告書・督促状がくる
②期限の利益の喪失予告通知がくる
③期限の利益の喪失通知がくる
④代位弁済通知がくる
...となります。
催告書・督促状
ローン滞納から1~3ヶ月ほどで、カード会社から催告書・督促状が通達されます。指定した日までに未入金と遅延損害金を返済するよう、催告する内容が書かれています。
期限の利益の喪失予告通知
ローン滞納から3~6ヶ月ほど経過すると、カード会社から期限の喪失予告が通知されます。指定した日までに未入金と遅延損害金を返済しない場合は、期限の利益を喪失させるという内容です。
期限の利益の喪失通知
期限の利益の喪失予告通知で指定された内容が履行されず、ローンを滞納したままになっている場合は、カード会社から期限の喪失通知が通達されます。
期限の利益を喪失した為、ローンの残債を指定日までに一括返済するようにと書かれています。
代位弁済通知
期限の利益の喪失通知で指定された内容が履行されず、ローンの残債を一括返済できないままになっている場合は、保証会社から代位弁済通知が届きます。
上記でもご説明したとおり、保証会社が代位弁済を行った、という状況です。代位弁済したローンの残債、遅延損害金を、保証会社に一括返済するようにと書かれています。
代位弁済の対処と債務整理について
上記でご説明してきた通り、代位弁済がなされると、さまざまな悪影響があります。それでは、代位弁済の対処はあるのでしょうか?下記にて詳しく解説いたします。
任意売却を利用する
一度、代位弁済がなされると、住宅は差し押さえられる流れになるのですが、その前に住宅の任意売却をすれば、住宅の差し押さえと競売による損失を、ある程度は防ぐことができます。
競売よりも、かなり良い条件で住宅を売却できる為です。
任意売却とは、借金のある人とカード会社との合意に基づき、ローン返済が難しくなっている住宅を売却することです。
一般的に、住宅の売却価格が、ローンの残高を下回っており、相殺できない状態にある場合は、あなたはその差額を一括返済しなければなりません。それができないとなると、住宅の売却は不可能です。
ところが、任意売却なら、住宅ローンを組んでいるカード会社と合意を得ることで、ローンの残債があるまま抵当権を抹消し、住宅を売却することが可能となります。
債務整理をする
任意売却をしてもなお、売却価格が住宅ローンの残高を下回っており、相殺できない場合は、その分を返済する必要があります。
もっとも、任意売却後の残債の返済も難しいという場合や、あるいは代位弁済の対象が住宅ローンではなく、そもそも任意売却ができないという場合は、どうすればよいでしょうか?
可能な対処としては、下記の債務整理の手続きがあげられます。
①任意整理
②個人再生
③自己破産
任意整理
任意整理とは、カード会社と交渉して、利息や遅延損害金の支払いを免除してもらい、なおかつ、返済期間を長くすることができる(およそ5年計画)ことで、毎月の返済額を減額できる、というものです。
ただし、住宅ローンについては、住宅ローンを組んでいるカード会社は、抵当権という強い権利を持っているので、任意整理などによる返済条件の変更には応じない可能性が、かなり高いです。減額なども期待しない方がよいでしょう。
任意整理の詳細はこちら
個人再生
個人再生とは、裁判に申し立てをして、借金の総額を約5分の1程度にまで減額してもらった上で、残りの借金を原則3年(場合によっては5年に延期可能)かけて、カード会社に分割で支払っていくことで、借金を整理する、というものです。
個人再生には「住宅ローン特則」(住宅資金特別条項)というものがあります。これは、債務整理をする人の経済的な更生のために、可能な限り自宅を残して、借金を整理できるようにするために設けられた制度です。
この制度を利用すれば、個人再生をしても、住宅ローンに関しては特別に、今まで通り、あるいは多少の返済計画の変更をして、返済を続けることができます。
住宅ローンの巻きなおし
ただし、保証会社から住宅ローンの代位弁済がされてしまった場合、借金を住宅ローンを組んだカード会社に支払うことが不可能となります。
したがって、住宅資金特別条項が利用できず、住宅を差し押さえられてしまうのですが、このようなケースでも対応策はあります。
上記でもご説明した通り、代位弁済の日から6か月以内に、個人再生の申し立てをおこなえば、代位弁済はなかったことにできます。これを「住宅ローンの巻きなおし」といいます。(なお、6ヶ月以内に個人再生をするのは、かなり大変なので、早急に専門家に相談するべきです)
この結果、住宅ローンの返済先はもとのカード会社に戻るので、住宅資金特別条項が利用して、住宅を手元に残すことが可能です。
個人再生の住宅ローン特則(住宅資金特別条項)とは?
自己破産
自己破産とは、裁判所に申し立てすることにより、破産者の財産を処分することでお金に換えて、カード会社への返済に充てた後、残った借金をゼロにする、という手続きのことです。
自己破産をすると、生活必需品以外の全ての財産を差し押さえられるので、住宅を手元に残したい場合は、お勧めできません。
自己破産の詳細はこちら
まとめ
代位弁済をされると、6ヶ月以内に個人再生の申し立てを行う必要があり、それができないとなると、ほとんどの場合、自己破産するより手立てがなくなります。
このような事態を未然に防ぐ為にも、住宅ローンは優先して返済を続けるべきです。
もし、他の借金でローンの支払いが大変だという場合は、住宅ローン以外の借金を、任意整理などで整理していくべきでしょう。
また、早めに弁護士や司法書士などの、専門家に相談すれば、個人再生前に住宅を任意売却するなど、さまざまな方策を立てることが可能となります。
悩んでいる人は、一度、専門家への相談を検討しましょう。
- 代位弁済となると期限の利益を喪失し、ローンの一括返済を請求される
- いったん代位弁済となると、自宅を残すために個人再生を6ヶ月以内に行わなければならなくなり、手続きの難易度が上がるので注意が必要
- 代位弁済になる前に任意売却を検討すべき
- 代位弁済になる前には予兆があるので、事前に察知して専門家へ相談することが大切
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